地域包括ケアの推進と共に、訪問診療や訪問看護への期待がますます高まっています。こうした中、ある広報誌の取材で、訪問看護に同行させていただきました。
この日、訪れたのは、ご主人に先立たれ、ひとり暮らしをされている80歳代の女性のご自宅。看護師さんは明るい笑顔で話しかけながら、血圧・脈拍・酸素飽和度などのバイタルチェック、打診・聴診、薬のチェックなどをスムーズに進めていきます。

ふと部屋を見渡すと、ご主人との思い出の品や写真がたくさん飾られ、仏壇にはきれいな花と水がきちんと備えられていました。仏壇にほど近いソファに座り、一度もケンカしたことがないという優しいご主人のこと、遠い土地で所帯を持って頑張っている娘さんのこと、ぽつりぽつりと話しながら「まだ主人が迎えに来ない」と寂しそうに微笑む女性。その気持ちをやさしく汲み取りながら、元気づける若く健気な看護師さんの姿に、思わず胸が熱くなりました。

訪問看護とは、患者さんの生活の中に入っていき、心と身体に耳を傾けること。
ときには人生に寄り添って、相談相手にもなること。
本当に大変な仕事です。
でも、これこそ看護の原点のような気がしました。
彼女のように、やさしくて強い看護師さんが地域に増えていくことを願っています。