臨床心理士は知っていても、「臨床宗教師を聞いたことがない」という方は多いのではないでしょうか。私もそのひとりでした。

東日本大震災(2011年)以降、年3回、東北入りして取材を重ねていますが、その縁で出会ったのが、宮城県栗原市にある洞宗通大寺の住職である金田諦應(たいおう)さんです。

金田住職は、沿岸部から市の火葬場に運ばれてくるたくさんのご遺体と向き合われ、読経ボランティアをされていましたが「亡くなった方の弔いも大切だが、生き残った方の力になりたい」と沿岸の被災地へ自ら赴きます。そして大切な人との死別で苦しむ多くの人と出会い、その悲しみによりそう「傾聴活動(心のケア)」を始めました。おいしいケーキとコーヒーをふるまう移動式カフェ「café de Monk」を被災地で開設し、だれかがやってくるのを待つ。だれも来ない日があっても、じっと待つ。話しかけてくる人がいれば、ひたすら耳を傾ける。それがどんなに根気と忍耐がいることか、想像するのは難しくありません。

こうした日々の中から金田住職は「臨床宗教師」という言葉をつくりだし、その後、東北大学に「臨床宗教師」を養成する場も生まれました。金田住職の息子さんは今、緩和ケア病棟で臨床宗教師として医療スタッフと共に患者さんを支えています。
医療と宗教を超えた新しいケアのかたち、ぜひ見守っていきたいと思います。